はじめに
2024年9月、Snapshot Labsが「Snapshot X」という新しいオンチェーン投票プロトコルを発表されました。
この画期的なソリューションを理解するために、まずは従来のSnapshotの基本機能を振り返り、そしてSnapshot Xがもたらす変革についてまとめてみました。
Snapshotとは
Snapshotは、2020年に登場したDAOガバナンスのためのオフチェーン投票プラットフォームです。
その主な特徴は以下の通りです
- ガスレス投票: ユーザーはブロックチェーン上でトランザクションを発生させることなく、署名のみで投票できます。これにより、ガス代のコストを気にせずに気軽に投票に参加できます。
- 柔軟な投票戦略: トークン保有量だけでなく、NFT所有や過去の貢献度など、様々な要素を組み合わせて投票権を設定できます。これにより、DAOの特性に合わせた多様なガバナンスモデルを実現できます。
- 使いやすいインターフェース: 直感的で使いやすいUIにより、技術的な知識が少ないユーザーでも簡単に投票に参加できます。
- 提案作成の自由度: 誰でも簡単に提案を作成し、コミュニティに意見を問うことができます。
- 豊富な統合機能: DiscordやTelegramなどの主要なコミュニケーションツールとの連携が可能で、投票の告知や結果の共有が容易です。
上記の特徴により、Snapshotは多くのDAOに採用され、Web3コミュニティにおける主要なガバナンスツールとなりました。
しかし、オフチェーンでの投票には、セキュリティや透明性の面で課題がありました。
そこで登場したのが、Snapshot Xです。
Snapshot Xとは
Snapshot Xは、従来のSnapshotの利点を維持しつつ、オンチェーン投票のセキュリティと透明性を付加した新しいプロトコルです。
Starknetというレイヤー2ソリューションを活用し、低コストでオンチェーン投票を実現しています。
Snapshot Xの主な特徴
- ストレージ証明技術: Herodotus社と提携して開発されたこの技術により、ユーザーはEthereumメインネット(L1)上のトークン保有を証明しつつ、Starknet(L2)上で投票を行うことができます。これにより、投票コストを大幅に削減しつつ、ERC-20トークンやNFTなど、あらゆるオンチェーンアセットを投票権として利用可能になりました。
- 低コスト化: Starknetの活用により、L1比で10〜50倍のコスト削減を実現。DAOの設定や提案の更新コストも最大200倍削減されています。
- 選択的なガス代負担: Snapshot Xでは、DAOが選択すれば、ユーザーのガス代を負担するオプションがあります。これは’Mana’というメタトランザクションリレイヤーを通じて実現され、ユーザーは署名を行うだけで投票が可能になります。ただし、この機能はDAOがオプトインする必要があり、デフォルトではありません。
- モジュラー設計: Voting strategies、Proposal validation strategies、Execution strategiesなどのモジュールにより、DAOは自身のニーズに合わせてガバナンスプロセスをカスタマイズできます。
- マルチチェーン対応: Snapshot XはStarknet上で完全なオンチェーン機能を提供し、さらにEVMチェーン(Ethereum、Optimism、Polygon、Arbitrum)との互換性も持っています。将来的にはクロスチェーンでの投票と実行の可能性も探られていますが、現時点ではStarknet上での利用が最も機能が充実しています。
Starknetは、Ethereumのレイヤー2スケーリングソリューションとして注目を集める先進的プラットフォームです。Validity Rollupを採用し、STARKプルーフを活用することで、高いスケーラビリティと低コストを実現しています。Cairo言語を基盤とし、ネイティブアカウント抽象化やコンポーザビリティなどの先進機能を実装。STRKトークンがエコシステムの中核を担います。Ethereumの安全性を維持しつつ処理能力を大幅に向上させ、革新的なdApps開発を可能にしています。ブロックチェーン業界における重要なインフラストラクチャとして、今後の発展が期待されています。
Snapshot XがもたらすDAOガバナンスの変革
Snapshot Xの登場により、DAOガバナンスに以下のような変革がもたらされると期待されています:
- オフチェーンとオンチェーンの融合: 1つのインターフェースでオフチェーンとオンチェーンの両方の投票を実行できるようになり、ガバナンスプロセスが大幅に簡素化されます。
- 柔軟なガバナンスモデルの実現: モジュラー設計により、DAOは自身の哲学や要件に合わせて独自のガバナンスモデルを構築できます。
- 参加障壁の潜在的な低下: DAOが選択した場合、ユーザーのガス代を負担することで、より多くのコミュニティメンバーがガバナンスに参加しやすくなる可能性があります。
- マルチチェーン対応の可能性: 現在はStarknetが主な対象ですが、将来的には複数のチェーンにまたがるDAOの統合的なガバナンスが実現される可能性があります。
- セキュリティと透明性の向上: オンチェーンでの投票により、投票結果の改ざんや不正が困難になり、ガバナンスの信頼性が向上します。
安全性と今後の展望
Snapshot Xのスマートコントラクトは、OpenZeppelinとChainSecurityによる監査を受けており、高い安全性が確保されています。
また、すべてのコードがオープンソース化されており、透明性も担保されています。
今後は、より多くのDAOがSnapshot Xを採用し、新しい投票戦略や実行戦略の開発が活発化することが期待されます。
結論
Snapshot Xは、従来のSnapshotの使いやすさと人気機能を維持しつつ、オンチェーン投票のセキュリティと透明性を融合させた革新的なプロトコルです。
この技術の登場により、DAOはより効率的で透明性の高いガバナンスを実現し、Web3の理念により忠実な形で運営を行うことができるようになることを期待できます。
DAOがSnapshot Xを採用することで、以下のような具体的なメリットが期待できます:
- セキュリティの向上: オンチェーン投票により、投票結果の改ざんや不正が困難になり、ガバナンスの信頼性が大幅に向上します。
- コスト削減: Starknetを活用することで、従来のオンチェーン投票に比べて大幅なコスト削減が実現します。これにより、より頻繁な投票や小規模なDAOでの採用が容易になります。
- 透明性の確保: すべての投票がオンチェーンで記録されるため、ガバナンスプロセスの透明性が飛躍的に向上します。
これらのメリットにより、DAOは運営の効率性、信頼性、そして民主性を大幅に向上させることができます。
DAOのガバナンスの未来は、より参加しやすく、透明で、そして効果的なものになろうとしています。
Snapshot Xがその変革の中心となることは間違いありません。
DAOに関わる全ての人々にとって、この新しいツールがどのような可能性を切り拓くのか、今後の展開が楽しみです。
Snapshot Xの登場は、DAOガバナンスの新時代の幕開けを告げるものと言えます。
各DAOがこの技術を積極的に検討し、導入していくことで、Web3エコシステム全体がより強固で持続可能なものになっていくことが期待されます。
Snapshot Xが切り拓く新たなガバナンスの形に、今後も注目していきます。
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